About Us 私たちについて


榮榮&映里(ロンロン・アンド・インリ)
(English)
 
榮榮(中国)と映里(日本)は、2000年より共同で制作を行っている写真家デュオです。ふたりの作品は、写真というメディアを通じて、人と人との交流やつながりの可能性を、実験的かつ詩的なかたちで探求・表現しています。
 
代表作には『富士山、日本、2001年』や『六里屯、北京』(1996~2003)、『妻有物語』(2012~2014)などがあり、ふたりの共有する生活とその環境、そして急速に変化する社会の中にある人間の存在や関係性を映し出しながら、写真表現の可能性を探り続けています。


 
活動と拠点
 
2007年には北京・草場地芸術区に「三影堂撮影芸術中心(Three Shadows Photography Art Centre)」を設立。「三影堂」の名称は、『道は一を生み、一は二を生み、二は三を生み、三は万物を生む』という老子の言葉に由来しています。写真(影)が無数の可能性を生み出す場所となることを願って設立されたこのセンターの建築は、アーティストの艾未未(アイ・ウェイウェイ)によって設計されました。
 
2008年からは、中国の若手写真家を発掘・支援するための「三影堂撮影賞(Three Shadows Photography Award / TSPA)」を主催。
2010年から2012年には、思想手(Thinking Hands)との共同企画により、アルル国際写真祭との連携イベント「草場地フォトスプリング – アルル・イン・北京」を開催。草場地や798芸術区のギャラリーと連携し、北京初の国際写真祭を実現しました。2015年には福建省厦門市に三影堂の分館を開設し、その活動は厦門へと引き継がれ、「集美(ジメイ)×アルル国際写真祭」として継続しています。
また同年、第33回「オラクル写真会議(Oracle Meeting)」を中国で開催。写真をめぐる国際的な対話と交流の場をさらに広げました。


 
人生とキャリア
 
榮榮
 
1968年、中国・福建省生まれ。三影堂撮影芸術中心および「集美×アルル国際写真祭」の共同設立者。
1992年に北京へ移住し、翌年には芸術家たちが集う北京郊外の村、のちに「東村(East Village)」と呼ばれる地域で創作活動を始めました。張洹や馬六明らとともに、実験的なパフォーマンスの誕生を写真で捉え、写真を単なる記録手段としてではなく、自己表現の方法として深く探究していきます。
 
1996年には、当時の中国における写真表現に新たな地平を拓くことを目指し、前衛的な写真誌『新写真(NEWPHOTO)』を共同創刊。これは既存の写真観への挑戦であり、自主的な発信の場として、若手写真家の思想と表現を国内外に紹介する重要なプラットフォームとなりました。
 
その後も、北京の都市風景や再開発による変容を捉えたシリーズを発表。2003年に『RongRong’s East Village』、2019年には『RongRong’s Diary: Beijing East Village』を出版しています。
 
 
映里
 
1973年、日本・神奈川県生まれ。高校時代に土門拳の写真集『古寺巡礼』に触れたことをきっかけに、写真の道を志します。1994年に日本写真芸術専門学校を卒業後、朝日新聞東京本社の出版写真部にてカメラマンとして勤務。1997年からはフリーランスとして独立し、より個人的かつ実験的な作品制作に取り組むようになります。
 
1996年から2000年にかけては、『1999 Tokyo』『MAXIMAX』『Gray Zone』『Self-Portrait』といったシリーズを通じて、自己探求と表現技術の深化に取り組みました。2020年には、これらの作品群を集約した写真集『饗宴―愛について(Symposion – About Love)』を出版しました。


 
出会いと共作のはじまり
 
 
1999年、榮榮が『新写真』の代表として東京の展覧会に参加した際、映里と出会います。互いに言葉は通じませんでしたが、手のひらに指で文字を書き合うことで対話を重ね、映里の深い理解に榮榮は強く惹かれました。
 
その後、二人はFAXや電話でのやり取りを続け、榮榮はたびたび映里を北京に招待します。簡素な言葉しか交わさなかったものの、写真で通じ合っていたふたり。9ヶ月後、映里は「これは運命だ」と感じて北京を訪れ、この旅がふたりの共同制作の始まりとなりました。


 
現在の活動
 
2015年より、ふたりは京都を拠点に活動を展開し、「即非京都(Jifei Kyoto)」シリーズの制作を開始。2021年には成都当代影像館およびKYOTOGRAPHIE京都国際写真祭で発表され、このシリーズはやがて「即非写真(Jifei Photography)」プロジェクトへと発展します。
 
このプロジェクトでは、実験的な創作と発表の場として「即非菴(Jifei-an)」を設立。展示のたびにかたちを変えながら、写真が持つ表現と哲学の新たな可能性を追い続けています。
 
近年では、M+(香港)、ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)、フィラデルフィア美術館、テート・モダン(ロンドン)、ハーシュホーン美術館(ワシントンD.C.)、ヨーロッパ写真美術館(パリ)、国際写真センター(ニューヨーク)、ハイ美術館(アトランタ)など、世界各地の美術館で広く作品が紹介・収蔵されています。


 
受賞歴
 
• 2016年:「ソニー・ワールド・フォトグラフィー・アワード」
 特別貢献賞(Outstanding Contribution to Photography) 受賞
 
• 2022年:「日本写真協会賞」
 国際賞 受賞